仕事中に瞑想をすることで、私は救われました。
2010年から2016年までの6年間、仙台の事務所で会計・管財の仕事をしていました。
41歳から47歳までの時期です。
この間は始終忙しく、事務所をでるのが23時、24時となることもありました。
1つ仕事が終わると1.5個仕事がくるという状況で、気が休まりません。
仕事がたまるので、繁忙期は休日も仕事にでていました。
職場は公務系なので、何をするにも手続きが多いです。
文房具一つを買うのに、まず、見積をとってもよろしいかの稟議を回し、代表者の承認が得られたら見積をとる。
次に、最も安価な金額を提示した業者と購入契約を結びますが、これもまた、契約をしてもよろしいかの稟議を回し、代表者の承認が得られたら購入契約（発注）をする。
モノが納品されたら、それが確かに発注したものかどうかの検査を行う。
検査に合格したら業者から納品書と請求書を受け取り、業者の口座に料金を振り込む。
たとえ買うのが消しゴム一つであっても、例外なくこうした手続きを行います。
複数の民間企業で働いた妻に聞いたところ、この程度のものは現場の裁量で購入することができ、こうした手続きはないとのことです。
しかし、うちは公務系の職場なので、その運営には税金が投入されています。
投入された税金がどのような経緯で、何に使われたのか、それを明らかにする客観的な記録を残しておかなくてはなりません。
記録を残すために、見積、契約、検査、支払という各ステップごとに手続きを行い、記録を作成します。
税金が投入されている以上、やむを得ません。
消しゴム一つ買うにしてもこうした煩雑な手続きを行うのですから、他の業務も推して知るべしです。
会計・管財であれば、モノの購入契約のほかに役務契約、施設・設備・機械の保守・修繕契約、工事契約、物品管理、給与の支給、旅費の支払、法人口座の管理、等々、その全てにおいて事細かく手続きが定められています。
仕事はすべからくそうするべし、ということです。
ともかくも、こうした会計・管財の仕事の大部分をほぼ一人で担当していた私は、ハードな状況にあったとは思います。
1つ目の仕事の後ろには2つ目、その後ろには3つ目の仕事が控えています。
それらが同時並行で進む場合もある、むしろそちらが多い。
あぁ、1つ目の仕事を終わらても2つ目、3つ目がある・・
その後ろには4つ目、5つ目・・
無間地獄にいるようです。
無間地獄だからという訳ではありませんが、私はこの頃仏教に凝っていました。
凝っていたのはテーラワーダ仏教です。
テーラワーダ仏教は、スリランカ・タイ・ミャンマーなどに伝わった南伝の仏教です。
（なお、北伝の仏教は西北インドからシルクロードに沿って、中央アジア、中国、朝鮮半島、日本へと伝わりました。）
アルボムッレ・スマナサーラさんの『怒らないこと』を読んだのがきっかけです。
アルボムッレ・スマナサーラさんはスリランカ出身の僧侶で、日本で仏教伝道と瞑想指導をしています。
仙台と札幌でそれぞれ1度ずつ、公演を聴きに行ったことがあります。
このテーラワーダ仏教で教えられているヴィパッサナー瞑想が、私を無間地獄から救ってくれました。
ヴィパッサナーのヴィは「ありのままに・明瞭に・客観的に」、パッサナ―は「観察する・観る・心の目で見る」という意味です。
ヴィパッサナー瞑想は、「今この瞬間の自分自身をよく観る」ということです。
瞑想方法の詳細には触れませんが、「今この瞬間」の「自分自身」を「よく観る」です。
通勤中などにこの瞑想をしましたが、ふと、仕事中にしてみるのはどうだろうと思いました。
試してみると、思いのほか効果があります。
以前は、1つ目の仕事をしているときにも、2つ目、3つ目が気になりました。
その後ろにも4つ目、5つ目が控えていると思うと、息が詰まりそうです。
しかし、1つ目の仕事をしているときにヴィパッサナー瞑想をすると、目の前の作業に心が留まるのです。
2つ目、3つ目に心が移ろってゆきません。
正確に言うと全く移ろわない訳ではありませんが、その程度は体感上、瞑想前の5分の1と言ったところです。
ヴィパッサナー瞑想の効果はありました。
数字のチェックをしているときには、目が数字を追っているその瞬間の自分を、目の感覚を中心に観察する。
資料の頁をめくっているときには、手がページをめくっているその瞬間の自分を、手の感覚を中心に観察する。
建物内を歩いているときには、右足と左足を交互にだしているその瞬間の自分を、足の感覚を中心に観察する。
このようにして、「今この瞬間」の「自分自身」を「よく観る」、を実践します。
ここ数年は他にやることも増え、テーラワーダ仏教から離れています。
ヴィパッサナー瞑想もできていません。
しかし、当時の経験で効果を実感しているので、少しずつ、意識して、再開したいです。
