(2008.11.8、江戸東京博物館、ボストン美術館浮世絵名品展)
博物館に関する本を、
1冊読み終えました。
本は、
小林克,2009,『新博物館学 これからの博物館経営』,同成社、
です。
この本は、
学芸員資格の取得のため、
履修が必要な、
博物館経営論の教科書でした。
学芸員資格取得の勉強は、
2021年10月から、
玉川大学の通信教育課程で開始し、
2022年9月に取得しました。
履修科目はそれぞれ、
レポート2本と、
試験1回が課されます。
博物館経営論は、
レポートを3月と4月に提出し、
試験を5月に受けました。
その準備のため、
この本を、
2022年の3月頃に、
読んでいます。
2年弱ぶりです。
著者は、
江戸東京博物館と、
東京都写真美術館で、
学芸員をされていました。
1989年、
29歳の時、
江戸東京博物館の開設準備室に、
就職しています。
1990年にバブルが崩壊し、
1990年代の半ば以降、
博物館は経営的な苦境に立たされます。
直営、
管理委託を問わず、
公立博物館は、
地方自治体からの予算を削減されます。
2003年に指定管理者制度が導入され、
江戸東京博物館は、
2006年度に、
東京都歴史文化財団が、
特命で、
指定管理者になっています。
2009年度には、
同財団、
鹿島建物総合管理株式会社、
アサヒビール株式会社、
の3者による共同事業体が、
指定管理者になりました。
指定管理期間は、
2016年度までの、
7年間です。
指定管理期間は、
当初は総務省から、
3年から5年という目安が通知されたため、
多くの地方自治体は、
3年としていました。
7年は長めで、
中期的な経営の見通しは、
立てやすかったと思います。
そうは言っても、
経営環境は厳しいものでした。
そうした環境で、
著者は、
江戸東京博物館の経営を軌道に乗せるため、
奮闘します。
博物館の基幹業務は、
資料の収集・整理保管・調査研究です。
博物館にとってそれらは、
欠かせません。
しかしこれには、
経営の安定と、
それを支える、
財務の健全が必要です。
そのため著者は、
資料の収集・整理保管・調査研究という、
基幹業務だけではなく、
付帯事業も必要であると言っています。
付帯事業は、
レストランやカフェ、
ショップなどで、
これらで収益を出します。
ただ設置するだけではなく、
収益を上げるために、
工夫をします。
レストランは、
古代ローマ展の開催に合わせ、
当時の人々が食べていたパンを、
再現して提供する。
カフェは、
展示室を閉じた後も営業を延長し、
来館者に、
展覧会の余韻に浸ってもらう。
ショップは、
学芸員の監修による、
レベルの高いオリジナル・グッズを、
開発・製造する。
こうした工夫です。
付帯事業以外にも、
来館者を増やし、
収益を上げる手段として、
広報の重要性を上げています。
広報は、
それを担当する、
独立した部署をつくります。
それほど、
広報は重要です。
著者は、
こうしたことを、
精力的に行ってきました。
その経験を基に、
博物館経営について、
論じています。
内容が具体的です。
具体的過ぎて、
よい意味で疲れます。
著者の、
江戸東京博物館の健全経営にかける、
熱量を感じました。
実地の経験が凝縮された、
密度の高い本です。